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2006年5月27日 (土)

ホロヴィッツのコンサート(演奏編1)

 (チケット争奪編)から続きます。

  6月11日土曜日、渋谷のNHKホール。開演は午後8時。

 演目は


  • ベートーヴェン「ピアノソナタ28番イ長調」作品101

  • シューマン「謝肉祭」作品9

  • ショパンポロネーズ「幻想」作品61

  • 同「3つの練習曲」

  • ポロネーズ「英雄」変イ長調作品53

 プログラムは変更はなかったと思うのですが、3つの練習曲が何だったか思い出せません。

 私は早めに会場に到着し、着席しておりました。
 暫くすると、私の座っている1C15列27の一番右端に誰かやってきました。これが誰あろう、同じく来日中のピアニスト、イーヴォ・ポゴレリチ!
 彼が一番右端(34番)。その隣は中年の日本人女性(招聘元の人みたいでした。)。この席は、私が蹴った座席の3つ隣だったんです。思わず泣きそうになりましたが、ここは演奏演奏と心に言い聞かせました(詳しくはNHKホールの座席表を参照下さい。)。
また少し前に、「ポゴレリチは三つ右隣」と書いてしまいましたが、これは「買わなかった席」の衝撃でつい記憶違いをしてしまったものです。謹んで訂正致します(順番に書いたら顛末まざまざ思い出しました)。

 私はピアニストがピアノコンサートを聴く姿を見るのは初めてでしたし、ポゴレリチが尊敬しているというホロヴィッツ(もう一人はミケランジェリだそうで)をどういう態度で聴くのか非常に興味がありました。故に着席直後から気づかれぬようにチラチラと彼の方を眺めていました。

 ちょっとびっくりだったんですが、沈むように座席の前の方に腰を下ろし、丸めた背中を背もたれにもたせ掛け、足は(長身なので収まりきらないのかやや通路にはみ出していた模様)片足を組み、肘掛けに肘をついて其処へ頭をもたせ掛けるという、結構だらしない座り方をしてました。そして座ってからずーーーっと隣の女性に向かってしゃべり続けていました。低くささやくような心地よい声音ではありましたが、すんごいおしゃべりである事は認めざるを得ませんでした。

 それから何となく前を見てると、私の二列か三列ほど前の、それも丁度私の座っている場所の前方に、若い?男性に案内されて年輩の、かなり仕立ての良いスーツを召した男性が席に着きました。
案内されるだけあって、VIPらしく開演までの間ひっきりなしに観客が挨拶に訪れるので、どうしてもこの人物に目がいってしまいました。ちょっと長髪の髪型と声に特徴のある、いかにも紳士という方でした。

 いよいよホロヴィッツがステージに登場。 演奏開始です。

 が、この時、一つだけ「大問題」がありました。ポゴレリチです。拍手が収まり、会場が静けさに包まれても、まだこの人しゃべっているんです。数日前、彼のコンサートで熱狂した私ではありますが(実はこれにも行っていた)、いかにポゴ様といえどもこの行為だけは許せません。

 後10数えて黙らなかったらひっぱたく(ごめんなさい、本気でそう考えました。)。そう心に決めて数を数えだしたとたん、ぴたりと声が止んだので、びっくりして思わず彼の席を見てしまいました。 
相変わらずのだらしない姿勢のままでしたが、今度は微動だにしていないのです。ビデオの静止画面並です。あんなに動かない人間を私は見たことがありません。

 そして唯黙っているだけではないのです。沈黙と言うよりむしろマイナスとも言うべき、周りの音を全部吸い込むような、其処だけ異空間になってしまったかのような静けさがありました。全身を耳にしているという緊張感さえ、この人物の方からは発せられていませんでした。音だけでなく雰囲気さえも、あらゆるものを吸い寄せるような静けさ、あんな静けさとの遭遇は後にも先にもあの時限りでした。

 いよいよ演奏の始まりです。

 最初に響いた音は「われ鐘」の様でした。

 この時、私の脳裏で万札に羽が生えて飛んでいく図が浮かばなかったと言ったら嘘になります。お年もお年ですし、本物に会えただけめっけもの。ポゴレリチの演奏を聴く態度を見ただけで十分ではないかと自分に言い聞かせようとしていると、ふと、音が変わってきている事に気がつきました。
 もともとリズムのとりにくいような曲ではあるのですが、そしてタッチミスも多いのですが、「われ鐘」音が、徐々に(今思えば急激にだったかも)改善されていくのです。

 正直我が耳を疑いました。さっきの音と違う。音がどんどん変化している、それも一曲の中で。

 と、またもや問題発生。今度はいびきが聞こえるんです。演奏が始まってまだ数分なのに。
 誰?と音のする方をみると、オールバックの長い白髪頭のてっぺんがうっすらと見えました。勘違いかもしれませんが先ほどのVIPらしく思われました。
 招待客ってこれだから困るわ、石でも投げつけたろか(済みません、これも本当にそう考えました)。と思ったものの演奏の進化が劇的で、すぐにいびきなど気にならなくなりました。

 一楽章のラリっている様なリズム。でもスタッカートは非常にキレがありました。実はこの時私はこの演奏を音楽として聴いてはいませんでした。何故ならば、一音一音が、ワンフレーズワンフレーズが、まるで探るように、よい音、あの「ホロヴィッツの音」を探している様に聞こえたからです。

 「このタッチでは?」駄目!「では、これでは?」ちょっと違う。「どう響かせるのがいい?」
 音の一つ一つがこんな台詞を言っているような雄弁さがありました。ホロヴィッツは初めての場所で弾きながら自分の音を探り出している。しかも目に見えて目標に近づいている。
 最初の曲の終楽章で私は一瞬ではありましたが、あの「ホロヴィッツの音」それも八割方のあの「響き」に会うことが出来ました。

 その後の「謝肉祭」
 これは聞き物でした。この曲でもどうすれば自分の音が出せるか、演奏が出来るかというホロヴィッツの挑戦は続いていました。概ね尻上がりに良くなったと言えます。
 最後の数曲、特に「ペリシテ人達を撃つダヴィッド同盟の行進」などは、全ての音の六割方が、絶頂期を聴いてないので何とも言えないのですが、多分彼にとっては六七割でしょうが、私にとっては涙が出るような素晴らしい音で、ミスタッチも気にならないくらい素晴らしい組立で、ホール一杯に響き渡っていました。
 あのNHKホールで。あのざるのような、野外ホールだってもうちょっとましなあのNHKホールで。
 
 蛇足ながらいびきの主様は、ダヴィッド同盟の一、二曲前で「クワッ」というご自分のいびきで目が覚められ、数秒間周りをきょろきょろしてらっしゃいました。クライマックス前にいびきが止まったのは幸運でした。

 前半の演奏が終わった時、私はそれが前半であるにも関わらず既にスタンディングオーベーションをする決意をしていました。
 でもコンサートも終わらないのにスタンディングオーベーションをするなんて日本人だけ、欧米のわらいもの、日本の恥。などという記事を読んだことがあり、困ったことに同じ列にその欧米の、しかも天才の呼び声高いピアニストがいるので、俄に日本の面目を背負ってしまった私は立つべきか立たざるべきか数秒悩みました。
 しかしこの演奏に敬意を表さずして何に敬意を表すのだと考え直して立ち上がりました。真横を睨み付けながら。

 「バカにしたければ、すれば?」

 本当に私がバカでした。
 ポゴレリチ氏は既に立ち上がっていました。そして熱心にスタンディングオーベーションをしていたのでありました。大事な時に出遅れ。欧米では絶対やらないなんて嘘書いたの誰っ!と叫んでみても後の祭り・・・。

 


 関連記事

演奏編2 (リンク)

後知恵編 (リンク)

ポゴレリチ追跡編 (リンク

コンサート映像 (リンク

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