朝靄のランニングホスト
けっして、一月が順風満帆に過ぎたため、ネタ枯れになった訳ではございません、念のため。
4、5年前の事だったと思うのですが、道路工事の為いつもなら停まらない場所で信号待ちをしていた、三月の朝の事でした。
我が生息地は特に春先霧がよく出て、この日も辺りは一面霧。車の停まったすぐ側からは、田圃の中に延びる一本の道があるのですが、この日は霧のため殆ど何も見えませんでした。しかし春の霧は気持ちよくて、私はその方角をぼんやり眺めていたのでした。
すると、霧の中に何か動くものが近づいてきました。車ではないので何だろうと思っていると、どうやら人間。
車は沢山通りますが、人が歩いているのは滅多に見ない道路なので、内心これは珍しいと思いつつ更に見つめていると、人影は徐々に近づいてきました。
その人は若い男性でした。
ジョギングをしているかの様に走っていました。
白のトレーナーの上下を着て、足下は白のジョギングシューズでした。
しかし、何故か、丈が脛まであるような黒のロングコートをトレーナーの上にはおり、裾をはためかせながら霧の中、黙々と走っているのです。
黒のロングコートと言うと、ご職業ホストな方々が着ているのを当時TVでよく見ていた私は、黒のサラサラ、ちょっと長目ヘアスタイルの、たぶんイケメンと思われる男性を即、「あ、仕事帰りのNo.1ホストのお兄さん」と無思慮にも考えたのでありました。
そんな馬鹿な話はございません。こんな田圃の真ん中にホストクラブなどあるはずがありません。しかしそれならばこの青年は何をしているのでしょう。
ただのジョギングならばこのようなコートをはおる理由が判りません。コートの裾が足に絡まりそうですし。
健康の為にジョギングしながら出勤をしているならば、手ぶらというのはいかにも変です。着替えもせずにトレーナーのまま仕事、という訳にもいかないでしょう。
第一、一番近くの民家まで結構な距離で、この人はこの出で立ちでどれだけの距離を走ってきたのだろうと考えると、それだけで不思議感に飲み込まれそうでした。
せめてこの人物が交差点でどちらに曲がるか確認したかったのですが、非常な信号はその前に青に変わり、私は渋々車を発進させたのでした。あの人どこへ行くのだろう・・・
その後、白い霧の中から黙々と走るロングコートの青年が浮かび上がってくる光景に2回遭遇いたしました。いつも同じ出で立ちで、いつも霧の中から現れるので、どこから来たのか皆目判らず、またいつもその人物が交差点に到達する前に信号が青に変わってしまうので、どこへ向かったのかさえついに判る事はなかったのでした。
しかし濃霧の朝しか見かけない、というのは一体どういう理由なのでしょうか。
この人物は霧の朝は車の運転が嫌。
霧の朝は私の動作が鈍くなって、時間が合ってしまった。
霧の中でしか走れない理由がこの人物にはあった。
どんな理由なのか、今となってはもう知る由もありません。ちなみにこの付近にきつねやたぬきが生息しているという話は、聞いてはおりません・・・。
いえ、冗談は抜きにして、ほんとにあの人何だったんでしょう。顔は要潤にちょっと似ていました(そういう所は良く見てるんだ、私(汗))。
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