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2007年10月16日 (火)

イノセンス

 2004年、劇場で観たものをTVでまた観てみました。公開当時今ひとつ評判は良くなくて、数少ない誉めた評も、誰の評か失念しましたが、「この祭りのシーンの見事さだけで十分ではないか」というもので、でも画面が小さいTVでも、二度目でも、それでもやはり面白かったのは何故なのか、ちょっと考えてみました。

 もっとも私は士郎正宗の原作を読んだ事がなく、前作の甲殻機動隊と何本かのアニメを見た限りでは、この原作は国家レベルの陰謀、扇情、解いても絶対に真っ直ぐにはなってくれない状況のあやを見事に描いている様に見えるので、怖くて今だ手を出せてはおりません。
だから私の見方はかなり的はずれかもしれないし、士郎作品から見れば押井の解釈は「これはないだろう」という部分があるかも知れないし、原作を読んでみたら私も「これはないでしょ」と思うかも知れません。そういう事を大前提にして、なお語ってしまうと、

 この映画のテーマはプラトンの洞窟を踏襲しているという、あまりにもありきたりな表現を先頭にもってくる自分が情けない訳ですが、勿論そのままではなく、人間とその理想形としての機械の境界がどこまでもあいまいになっても、それが築き上げる世界は、生身の人間だった時と寸分変わらぬ人間の業に支配され、そして何より悪いことは、人間の懸想した概念があまりに蔓延したため、本来の人間が何処にいるのか判らなくなっているという押井流の世界観、と言えるのではないかと思うのです。
勿論この観を言葉で表せる訳もなく、これを表すために押井はデジタル加工した何処までも細かい画像を築き、色、形、構成、全てがその世界観(つまりは押井守の頭の中)を描く為にきっちり使いきり、また逆から言えば、きっちり使い切れるまで頭の中の概念を煮詰め、脳内で完全に(もちろん映画の画像以上に)視覚化、もしくは具体化させた姿勢に心を動かされるのではないかと思うわけです。

 その白眉が祭りのシーンではないでしょうか。この祭が胸を打つのはそれが細かく書き込まれているからだけでは勿論なくて、何処までも飽きることなく上を望みシアワセを望みながら、自らの災いを託すものを自らと同じ形に作ってしまう人間そのものを、山車となり、飛び散る紙切れ(散華?)の形を借りて表しているのではないでしょうか。山車や人形を祀りながら、焼く人間と焼かれる人形の境の曖昧さに気付かずに、ひょっとしたら人形を焼くつもりで自分を焼いているのかもしれないし、焼かれたヒトガタである人形の方が、焼く人間よりずっと人間性を持っているのかもしれないとか、描かれた形の向こうに言葉や形だけでは表しきれないものの存在が厳然とあると思うのです。だから冒頭に挙げた評の様に「これを観るだけでも十分価値はある」訳です。
そして重要なのはこの祭りがエトロフ(作品内の状況と存在するエトロフは無関係と言っていいと思います。何処でも良いが少なくとも主人公達が住んでいる場所とは違う法の狭間という場所です)で行われたということ。この地にはバトーやトグサらを現実と幻想の狭間へ引きずり込んで翻弄するキムの館があり、法の狭間に浮かび、人間と人形を限りなく同一化させていくロボット会社の製造船が停泊しているのです。

 こう書いてみると、ものすごく判りやすいメッセージだと思うのですが、最初に観たときは恥ずかしながらあまり判りませんでした。あのリアル過ぎるエトロフ特区と、平べったいアニメな人物描写との対比とか、さりげなく紛れ込ませた嘘臭い動作(これを見ると一瞬自分がどこにいるのか判らなくなる)など、二度目で判る事が多かったです。
 判るといえば、世界観を補足している大量の引用をゆっくり聞く余裕がありました。その引用の中身は賛成できない部分も多いのですが(引用調べたサイトがあったんですよ。ここでロマン・ロランだって。信じられんわ)、押井ワールドの一端を担っているのは間違いないのでその部分からも考えていくことができます。

 ストーリーは最後にバトーを工場船に単身乗り込ませ、話のクライマックスとエトロフという場所が表象しているものに飲み込まれそうなバトーの戦いを上手く繋げ、そこへ少佐も登場させ、順調にまとめに入るのですが、最後の最後、救出した被害者の口から安直な台詞で状況説明させ、更に100歩譲っても、言うなら独白であろうという心情を全く関係ない相手に対してバトーが述べるという、あまりにも芸のない展開に今回も絶句したのでありました。
概念を表現することに長けると実地を表すのは下手になるのでしょうか。監督の集中力が持つのは一時間半という時間の制約もあったのでしょうが、もうちょっと現実も見ようよ、と思った私でした^_^;


イノセンス公式サイト
 押井守公式サイト
 「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」公式サイト
「引用 - イノセンス関連情報まとめ」サイト
http://freett.com/iu/innocence/quote.html
レンタルサーバの関係でしょうが、スパイウェアとも見なされるJWORDインストールのウインドウがかなりしつこく出てきますので、このサイトへ行かれる方はご注意下さい。

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コメント

『攻殻機動隊』はだんなと一緒に見たことがあります。
WOWOWで『イノセンス』の放送があるよと話したところ、「NHK(BS)で放送した時に見たよ。見るんならDVDーRにしてあるよ」と言われてしまった。だんなは自分ひとりで先に見ていたのです。
『攻殻機動隊』はなかなか面白いですよ。

はるぴょん様


 『攻殻機動隊』は好きなんです。10年ほど前、タイトルさえよく知らなかったのにTVでたまたま見たらこれが面白くて。
それまで押井守の名前も知らなかったと思います。
「イノセンス」は続編です。ストーリーはなんですが、映像はすごいです。新しい技術を使ったとかでとんでもない仕上がりです。
これをはるぴょんさんに黙って一人で観ていたなんて・・・(笑)

ぽんずさん、大先輩です。
だんなは『ゴースト・イン・ザ・シェル』が一番いいと言っています。
去年はふたりで夜中に『エヴァンゲリオン』のDVDを見たりと、うちは少し変わっているんです。

ところで、「栗ごはん」召し上がったんですね。秋ですよね〜。
先週、『フランス秋色散歩』(NHKのハイビジョン)という番組でフランスの村から毎日生中継をしていました(今週BSー2で放送中)。そこで「焼き栗」を見ました。剥かないでそのまま栗を焼くんです。とても美味しそうでした。日本の栗と同じ種類なのか分かりませんが、あ〜、食べたい。食べたいです。ワインも美味しそうでしたし、景色もきれいで素敵でした。いいな〜、フランス。美味しそうで(はるぴょんの脳はすべて「食」でできている)。

はるぴょん様

『ゴースト・イン・ザ・シェル』、確かにあれが一番いいです。
衝撃的と言って良いくらい。

>>ふたりで夜中に『エヴァンゲリオン』のDVDを見たりと
 こう言うところで趣味が合うのが一番よいのではないでしょうか。
一人で観てもつまらないですし、「何処がいいのか」」と言われて先に寝られてしまってはつまらないを通り越してしまいそうですし(笑)。

>>『フランス秋色散歩』
 わ~、なんか旅心を誘われるような番組。焼き栗は皮がぽこっと取れるのだそうです。って、今思い出した。イタリアの焼き栗ですが冬頃売ってます。赤い三角の紙に入っていて、お味は焼きたてではないので何とも言えないのですが。

>>あ〜、食べたい。食べたいです。
 判ります~、私も食べたいです(脳が半分「食」ですから)。
5億円、あたらないかなと思ってしまいます。信州でもころもんが誕生した模様です^_^;  

今日、茹でた栗を食べましたが、おフランスにはほど遠い感じ。
やはり、焼き栗でないと。
にゃんこも甘栗ではないのできっと食べないですよね(猫のこももは甘栗好き)。

ころもんは広島だけではないのですか。信州にも・・・実は、東京にも・・・です。
買わなければ当たらないんですよね。買っても当たらないけれど。

はるぴょん様

 お、栗ですか~。 でもシンプルに茹でただけでも美味しいですよ。あちらの栗は甘くないのでお料理に使えるのだと、フレンチのシェフがTVで言ったことがあります。

>>にゃんこも甘栗ではないのできっと食べないですよね
 うちの故猫は栗ならなんでも、モンブランでも食べました。食い意地が張ってたんです、私に似て^_^;

>>買わなければ当たらないんですよね。買っても当たらないけれど。
 これが悩ましいですよね。日本の宝くじは賞金の率がとても低いのだそうです。そんなアコギな率で商売しているなんて、一体どんな悪徳胴元だ、と南米マフィアのボスに問われ、日本政府だと答えたら絶句されたと安部穣二が何かに書いてました。 
これを知ったら買うに買えません。

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