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2010年3月18日 (木)

3月5日のヤクルト

 死が近くなった頃、父のベッド脇には、朝食に付いてきて手をつけられずにそのままになったヤクルトが何本か溜まっていた。その中の一番新しいものは賞味期限が3月5日だった。私はそれを眺めて、父とこのヤクルトとどちらの寿命が長いのだろうかと思った。父はそれから数日後、ヤクルトよりずっと早く28日に息を引き取った。

 葬儀が終わってから、何度もこのヤクルトの事を考えた。物は壊されない限りそこに存在するけれど、命はある日ふっつりと消えてしまう。なんと儚いものなのだろうかと。ヤクルトに届かなかった命。

 しかし父にはヤクルトが製造される遙か前からの、数十年という人生があった。父の看病中に、決して多くはなかったけれど父が今まで生きてきた力、それは生きたい、生き延びたいという願望とは明らかに違う、なんというか生きるエネルギーそのものを感じた事が何度かあった。その時私はふと、人間は「生きる」を続けることでしか死ぬことは出来ないのではないかと思った。そんな風に考えた自分に面食らった。

 当時の私はこれから来るであろう身内の死に方しか考える余裕はなく、終わることしか考えられず、終わりの前に連綿と続いていた生きる力そのものを垣間見せられて、びっくりしただけかもしれない。それでも私が感じたエネルギーの様なものは、今思いだしても息を呑むような鮮烈な印象を残した。
多分父だけではなくて、人間は誰でも、生きとし生けるものは全て、あの時私が感じた鮮烈なエネルギーを輝かせて日々を過ごしているのだと思う。普段は気がつかないだけで。
数十年生きた人はもちろん、生まれたその日に命を落とした赤ん坊も、そのエネルギーは、見た目は小さいのにカゼイシロタ株満載のヤクルトより更に(と言っても菌も命なんだけど)、ずっとずっと濃密で尊いものなのだと、あの時を振り返って今はそう思う。


  死ぬとは、生きていなければ出来ない事。

 亡くなった全ての方の命に敬意を表して。

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コメント

おはようございます。
落ち着かれましたか?

我が家も何の前触れもなく16日に
両親が他界致しました。
亡くなってる母を見つけた父が
私たちに黙って後を追ってしまった次第。
その過程は非常に衝撃的でしたが
2人の表情はまるで
「旅行にでも行くような楽しげ」でしたので
「いってらっしゃい」と送りました。

生き物班長、お姫中学生ともに大活躍でした。
大切な中等部修了式や小学校の卒業式の日に
祖父母の葬儀で出席させられなかった事が
申し訳なく思われますが、当日から大活躍だった
班長は1日遅れた昨日19日に
校長先生をはじめ先生方から
「一人だけの卒業式」をしてもらいました。
『人もよし、我もよし』と言うお言葉とともに
「紅白まんじゅうの美味しい食べ方」まで
伝授してもらい…(大爆)
それはそれでいい経験になったのでは
ないかと思います。

あれこれと後悔することの方が多いですが
せんのないコトなので、とりあえず前進します。

これからもよろしくお願い致します。

えびこちー様

 えびこちーさん、心からお悔やみ申し上げます。
訃報を伺った時は、自分の親の時より衝撃でした。お父様がかりんちゃんの待ち伏せじゃれつき攻撃に、廊下の真ん中で固まっていらしたエピソードを何度も思い出していました。
お母様の後を追うお父様。心の底で仲良く繋がっていたご夫婦だったのですね。その人生はとても素晴らしいものだったのかと。
棺に付いた猫ちゃんの歯型も勲章ですよね。周りの人にどれだけ好かれたかが判りますもの。

 うちの父は家庭内ではかなり気むずかしかったので、不謹慎にもうらやましいような気さえしてしまいました。でもそんなご両親ですと残されたえびこちーさん達の悲しみも大変なものと思います。

>>生き物班長、お姫中学生ともに大活躍でした。
 頼りになりますね~。
>>「紅白まんじゅうの美味しい食べ方」まで
 大人から些細な、でも内緒の知恵を伝授されるって、成長を認められて仲間内に迎えられたような、そんな感じがしますよね。班長王子にはとても力強い励ましだったのでは(笑)

>>あれこれと後悔することの方が多いですが
せんのないコトなので、とりあえず前進します。
私もえびこちーさんを見習って前進します。
でもえびこちーさんにはお子さん達が育つまでと、お子さん達が独立した後の晴れ晴れした人生が待っているのですから、その時体にガタが来ないように、無理をせずゆっくり進んで下さいね。心のケアは猫ちゃん含めて家族全員、きちんと心がけて下さいね。

>>これからもよろしくお願い致します。
 こちらこそよろしくお願い致します。
これからが大変ですよ。年金の死亡届(10日以内)。あと自治体からの葬祭費支給手続き(3月は住民税納付なので引き落としがまだなら早めがよいかも)。続々続きますので、ほんと、頑張って乗り切りましょうね(汗)

ぽんずさん、こんばんは。

ヤクルトのお話を伺ってなんだか切なくなりました。

私も義父を看取った時にこんなことを感じました。
それは、死ぬと言うことは簡単ではないということです。人間ってその時までは、どういうかたちでさえ生き続けなければ、死ねないものなのですね。看病しながら死ぬのも大変だと思ったものです。

人間は最期のその時まで命の炎を燃やし続けなければ死ねないのですね。

こもも様

>>私も義父を看取った時にこんなことを感じました。

 こももさんもやっぱりそう思われましたか。

>>人間は最期のその時まで命の炎を燃やし続けなければ死ねないのですね。

死ぬということがあるのではなくて、ひたすら生きるということしかないのではないかと思えてきました。
逆説めきますが、命の炎を燃やし続けて生きないと死ぬという大仕事はできないのですよね。
死ぬというのは大変ですよね。

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